U-NEXT配信中(吹替)の「リトル・ドラマー・ガール」第3回の日本語タイトルは “二人きりのエチュード”。BBCで放映された本編は全6話、日本版は全8話ですので独自のタイトルになりますね。
前回、渋々ながらモサドに協力することになった女優チャーリー。文字通り、チャーリー(フローレンス・ピュー)とギャディ(アレクサンダー・スカルスガルド)二人で役を作り、演じる作戦がスタート。
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↑もちろんオフショットです。
ギャディと二人で “役になり切る” 訓練が始まりました
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テロリスト、サリムの恋人役になって組織との接触を図るのがチャーリーの役割。パートナーであるギャディと共に準備を始めます。ローズ、レイチェルなどチームのメンバーがサポートします。
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作戦前夜「仲間になるなら隠し事はしないで」「一つ仕事を終えたら一つ質問に答えて」と約束させるチャーリー。どこまでがウソで本当か分からない状況ですからね。
ちなみにこのシーン、ベッドの上に立ってます。身長差30センチカップルですから、相手に怒ってるとき見下ろされたくない気持ち、わかりますね。
フローレンス・ピューは他にソファや岩や箱、階段などが役に立ったわ、と書いてました。
ところでこのとても可愛い黄色のドレスは、初めて(ちゃんと)会ったナクソスでギャディ(当時ペーター)がプレゼントしたもの。明日のドレスもプレゼントしました。下着と髪型も指定アリです。
このドラマ、色にこだわった作りになっていて時々スタイリッシュ。70年代の雰囲気もでてます。もちろん舞台が都会だけではないので抑えた表現ですが、服装も素敵でした。
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さて、この作戦のポイントを整理すると
●テロリストの恋人役として組織に接触するのがチャーリーの役割。
●目標は2つ。①現在遂行中のテロ計画を阻止すること ②組織のトップである長兄ハリールを捕らえること
●テロリスト(サリム/ミシェル)の本当の恋人アンナの存在を利用し、秘密の恋人としてチャーリーがサリムを手伝うという筋書き。
●ギャディがサリム/ミシェル役としてチャーリーと役作りをする。
というところでしょうか。
なお、ギャディは「二度とギャディと呼ぶな、ミシェルだ」と、サリムの別名を使うよう言います。そもそもサリムという本名こそ秘密なので、劇中ではチャーリーはギャディのことをミシェルと呼びますが、紛らわしいのでここではギャディと表記します。
役作りは面白かったです。というか、フィクションを作る過程・ディテールがこの作品の見どころの一つではないでしょうか。ギャディは「これからは一瞬も気が抜けなくなる。まわりの人間すべてが観客だ」と言って、二人だけの時も恋人らしく振舞います。
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例えば
●ミシェルはカラフルな服が好みで恋人にも着せたがる。
●ギャディの服・時計・アクセサリーはミシェルと同じもの。
●愛車は同じ赤のメルセデス。
●二人は秘密の恋人どうしで家族や組織にも知られていない。
●ロンドンの劇場で初めて会った(ギャディが観に行った)。
●ギリシャで再会し、アクロポリスでデートした。
●枕の下には銃。チャーリーはスリルを好む。
●愛し合って信用したから本名(サリム)を教えた。
●お互いに何10通も手紙を書いた。
などなどが、時に実際のセリフとともに再現されます。姉(ファトメイ)を通してパレスチナの女性について意見をかわすこともありました。
観ているほうとしては、まず、時計、そして車、服・・・とサリム/ミシェルとギャディが同じ格好ということが気になり始め、そういうことかと引き込む流れでしたね。車の装備や食事の仕方などいちいちディテールがよく出来ています。
きっと、ホテルやレストランにいたあの格好の人はサリムだったと他の人に印象づける事も目的なのでしょう。
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もちろんチャーリーの解釈を取り入れて、これまでの二人のやり取りを再現、二人のストーリーを作っていきます。
一方、マーティの情報分析チームは、ミュンヘンにあるサリム/ミシェルの部屋を捜索。領収証やカフェのマッチなどからサリムとアンナの行動を分析。
サリムへの芝居を続け、時に脅し、トルコから持ち込んだ爆弾をザルツブルクに運ぶ計画だったと突き止めます。
ギャディが話し、チャーリーが知ったサリムの物語
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イギリスの政治集会でサリムが語った生い立ちの話も繰り返しあらわれます。サリムの姿をしたギャディが語ることで、チャーリーは実際にサリムから聞かせされたように感じ、サリムのつらい人生を追体験することになります。
●1948年のアルナクバ(大惨事)の話から始まります。イギリスが僕たちを裏切り、イスラエル建国のためにパレスチナ人は住む場所を追われた。
●父はユダヤ人と共存できるはずだと信じ、宿に20年間ユダヤ人のためにコーヒーを用意していたのに殺された。
●祖父は家族を守るために銃を手に入れたが、その銃でユダヤ人は家族を殺した。8歳のときだった。
●10歳でアシュバルという子供の民兵組織に入った。
●11歳のとき、ヨルダンの爆撃に防空壕で耐えた。
そして、イギリスの集会で「君に恋をした」。
どこまでがギャディでどこからがサリム/ミシェルか分からない演出が、この後も何度も繰り返されます。
つらい人生を送ってきたサリムとチャーリーは惹かれ合い、見つめ合います。ロンドンでの上演の後、ブレスレットを贈られたというストーリーが出来上がります。
実際には、上の写真のようにアテネでギャディが渡しましたが、映像では、ロンドンでサリムがチャーリーに渡したシーンも登場します。
ギャディはサリムの集会での発言を何度も聞くうちにサリムの話を覚え、思考パターンを取り込んで人格を作ったのでしょう。そうしてチャーリーに恋人(サリム)として接していきます。
「ミシェルは今どこにいるの?」と聞くチャーリーに、「ここにいる。君といっしょに」と答えるギャディ。ここまで徹底しないとフィクションは本物に見えないのかと思い知らされますね。
同時に、ギャディはスパイの思考・危機管理をチャーリーに教え込みます。
携帯電話も無い時代です。連絡は公衆電話と電報でした。今どきのドラマのように通信機器を駆使して指令を送ることができるわけはなく、いざ作戦が始まったら一人で判断しなくてはなりません。このサスペンスが古いスパイ物がいまだに人気の理由なのでしょうね。
初の大役は、一人で爆弾を運ぶこと!
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サリムの計画がオーストリアでの爆弾テロと知ったマーティ達は、サリムの恋人チャーリーが仲間に爆弾を届ける作戦を行います。
本物の爆弾を積んだサリムのメルセデスに乗り換え、チャーリーが一人でギリシャ→ユーゴ→オーストリアと1300kmドライブすることに。
当初チャーリーには詳細を知らせないことになっていましたが、ギャディの判断で、ソビエト製の大量の爆弾を積んでいることを伝えます。
ただ、目的地がザルツブルクというのはおかしいと感じたマーティ、さらにサリムの尋問を進め、行く先をクラインアルムのグーティヒ広場に設定。変更を加えながら作戦を進めることにしました。
屈したサリムが「初めてヨーロッパに来て驚いたのは、人々の無関心だ」と涙するシーンは重かった。実感することは不可能だけど、自分たちの境遇はなぜこうも違うのかとショックだったに違いありません。
この作戦では、テロリスト側の連絡手段は電報2回、マーティ側はレイチェルがホテルでチャーリーに偶然出くわして伝えるという形をとっていました。チャーリーがボードゲームを使ってレイチェルに、ギャディの離婚は奥さんに逃げられたの? 逃げたの? と聞きだすシーンもありましたね。(逃げられたそうです。)
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チャーリーは一人で運転。ギャディは「決して離れない、そばにいる」と言って別の車でついてきてくれますが、これは心細いですね。
↓チャーリーの空元気。破れかぶれで歌ってました。チャーリーのキャラクターが分かる好きなシーンです。
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次回、いよいよ目的地のオーストリアに入ります。