カノンの海外ドラマ漂流記

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ドラマ「ライン・オブ・デューティ」シーズン3 Ep6 感想 ~ “キャディ” 事件決着! 息苦しくなる90分 Netflix

IMDbで 9.6/10。シリーズ最高評価のシーズン3最終話です。

もう、ケイト! ケイト! ケイト!
映画のような90分スペシャル。濃密な「ライン・オブ・デューティ」を象徴するのは、今回はケイト(ヴィッキー・マクルーア)の頑張りです。

 

シーズン3第6話「Breach」ネタバレ感想です。Breachには、違反のほかに穴、裂け目、突破口という意味があるようです。メインキャスト紹介はこちら。シーズン6放送予定のニュースはこちらへ

 

 

【児童性的虐待】フェアバンクを逮捕します。が!

おぞましい児童性的虐待事件。20年前、施設サンズビューの少年たちを有力者たちが組織的に虐待していた事件でした。

 

上の動画は、逮捕されて「キャリアを台無しにしてやる」とフェアバンク元警視正(ジョージ・コスティガン)がケイトを脅しているところ。

 

法的手続きと尋問テクニックのリアルさがこのドラマ最大の魅力。

今回も、被疑者が画像の使用を拒否する権利を別の罪状で覆すシーンがありました。

 

当初「職権乱用」で聴取を受けたフェアバンクでしたが、逮捕はさらに加重暴行、児童を含む青少年への性的虐待、司法妨害まで。

 

前回、ようやく突き止めた息子が虐待されたという1988年の女性の訴え、 ジョゼフ・ナッシュの証言などから追いつめることができました。

 

しかし「記憶にございません」と言い続けていたフェアバンク、なんと医師が認知症と証言して罪を逃れる状態に。

どうしようもないと言う法律顧問ジル(ポリー・ウォーカー)にAC-12トップ、テッド・ヘイスティングス警視(エイドリアン・ダンバー)は怒りを隠せません。

 

 

 

 

【デントン殺害とキャディ事件】ドットがスティーブに罪を着せる

スティーブ(マーティン・コムストン)が大ピンチに陥ります。

 

フェアバンクの聴取中に、テッド、ケイトの携帯にデントンからメールが届きます。前回、デントンが命がけで送ったダニーによる性的虐待「加害者リスト」。そしてデントンの遺体が見つかります。

 

前半の見どころは、この仲間どうしの尋問でした。マシュー “ドット” コッタン(クレイグ・パーキンソン)は、スティーブが “キャディ”でありデントンを殺したとして証拠を捏造、逮捕します! 一言一句計算された脚本、演技、カメラワークを堪能できるシーンでした。

 

背景にあったのは

・ドットがでっち上げた汚職警官組織と犯罪組織の仲介役 “キャディ” のプロファイリング→スティーブに合致するよう作ってある

・ケイトが覚えていた「デントンは痛い目に遭う」というスティーブの言葉→むしろケイトは信頼していたスティーブに裏切られたと思っていましたからね

 

そして逮捕の証拠は

スティーブの車→ドットが偽造プレートをつけて使った(前回、最後にプレートをはずしています)。交通カメラで足取りを追います

スティーブの銃→デントンを撃った銃。返却したのに書類を偽造され、汚職警官の仲間が盗んだ(返却時に写る警官)

プリペイド携帯→スティーブのスポーツバッグに入れ、車のトランクにドットが仕込んだもの。ドットがハリにダニー殺害を指示した携帯

5ポンド紙幣→スポーツバッグにドットが仕込んだもの。シーズン2デントンの賄賂金と同じ花粉がついていて、賄賂金5万ポンドはスティーブが偽造したことになる

ゴルフのティー→スポーツバッグにドットが仕込んだもの。ダニーがスティーブ宛ての封筒に入れていたものと主張。実際は加害者リストのメモでしたがドットが燃やした

 

ドットはデントン殺害後、プレートを外し、銃の指紋をふきとり必死で偽装工作をしていましたから。

 スティーブの必死の反論がつらかった。でもさすがに気づきましたね「警部補(ドット)はいつも結論を急ぎすぎてる」。

ロッド(・ケネディ巡査)の再検視を怠った、封筒の中身を調べさせなかった。この2点は絶対におかしいと確信しています。さらに、ティーが初めて証拠として提出されたこと、報告を受けていなかったことにテッドも不信感を抱きます。

 

スティーブは勾留されることになりました。当然ジルは早く起訴するように急かします。ドットは震えながらSIMカードをトイレに流し証拠を隠滅しました。

血だらけのデントンの幻、こわかったです。

 

テッドとケイト、捜査を続けます。観念したナイジが証言

テッドとケイトは、スティーブの容疑に公正に対処しながらも、何とか間違いであってほしいと思いながら捜査を続けたはずです。資料の見直しが続きました。

 

大きなポイントは、第5話ケイトが東ミッドランズ警察に行った決断でした。

ほんの短いシーンなのですが、AC-12内の同僚の調査には、中立的な指揮官に内密に許可を得るのが条件とのこと。テッド・ヘイスティングス警視にも知らせず、内部を調査できる権限ということになります。

そこで別の警察署に行き、女性のサマーズ警視に直談判します。理由も何も言えません、でも許可してほしいという無謀な相談です。が、許可されて内密の捜査をしていたのでした。

 

その結果をもとに、ドットの旧友、ナイジェル “ナイジ” モートン(ニール・モリッシー)に再聴取。状況を理解したナイジはやさぐれてまして、執拗に免責を要求していました。どうやら、前回、ドットに偽の携帯を返したことも含め、キャディのことも話したようです。

シーズン2第6話でお互いの秘密を知ったナイジとドット。これ以上は自分に火の粉がかかると観念したのでしょう。

 

ついにドットの聴取が始まります

聴取の前、ケイトはすでに、内密の調査でロナン・マーフィのファイルを手に入れたのがドットだったことを突き止めていました。

第1話冒頭でダニーが殺したロナン・マーフィは、児童性的虐待事件の加害者の一人であり、シーズン1の事件の首謀者かつシーズン2第1話トミー・ハンター殺しの被疑者でもありました。

 

その重大な情報を隠し→ジル経由でテッドにファイルが渡ったわけです。ドットを評価しているジルもファイルとティーをドットから受け取ったと認めました。さらにジルは、大勢の汚職警官がでたら信用を失う、単独犯に違いないと発言しテッドを幻滅させます。

善と悪があるならどちらを重んずるべきか承知している」というテッドの発言は、警官としての本分というドラマのテーマそのものでしたね。

緊張感が続く聴取のシーンは20分以上。一瞬も気が抜けません。

 

 

 

 

ロナンのファイルはロジャーソン巡査から入手したと証言しましたね。シーズン2の凶悪犯罪課、当時のスティーブのガールフレンドなので、操作されるかもしれないから隠したと。

さらにこれまでの証拠を検証するのですが、いちいち淀みなく嘘をつく。ああ言えばこう言うの天才が汚職警官なのだからたまりません。

質問に対しての答、嘘に対しての質問、それぞれそう来たか! と思わせる台詞が続いて飽きません。

 

偽造プレートのことも含め、テッドとケイトは徐々にドットを追いつめていきます。

ケイトの内部調査でドットの車、自宅も調べていたことが分かりました。車のトランクからは、第2話ロッド殺害時のロープと同じ繊維が発見され、自宅の捜査(または監視)でデントン殺害時のアリバイが崩れます。

 

さらに、ナイジが提出した携帯からトミー・ハンターとの通話記録が見つかり、スティーブが銃を返却した証言も。

ナイジは年金のためなら何でも言う男ですと嘘つき扱いしましたね。

 

決定打は、自宅の捜索とデントン殺害前夜にケイトにかけた電話でした。「スティーブを調べたかいがあった」は、尾行のことでなくスティーブを犯人にするための証拠のことでした。

ドットはケイトとの仲はうまく行っていると思っていたでしょうから、信用されていなかったこと、しかも記録をとっていたことに動揺していました。

 

ケイトから疑われていたと知り、自宅を捜索されたかもしれず動揺がマックスに達したドットは、「逃走の必要あり」と携帯でメール。
↓直後に警備の警官がもう一人を殺し、銃を乱射してドットと2人で逃走します!

 

胸が締め付けられる逃走劇でした

 
 
 
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AC-12オフィスで機関銃(でいいんですかね)を乱射した犯人たち。ケイトは迷わず銃と防弾ベストを取って走り出します。さすが元(潜入)武装警官。

 

最後7分の逃走劇は、とにかくケイトが走る走る。苦しくなって息ができなくて顔をゆがめながらも走り続けるんです。見ているこちらが泣きそうです。

 

上の写真は、トラックに飛びついてドットたちに追いつく場面。一気にテンションが切り替わりました。

一度は追いつめ 「足を洗う方法は一つよ。自供して」と説得しますが、銃を向け合ったまま。逃走車両がケイトをはねた時、一瞬躊躇するけど車に乗り込んでさらに逃げ続けるドット。

 

車を撃ってようやく追いつきます。同乗者に撃たれそうになったとき、ドットはケイトをかばって死んでしまいます。心配しながらも臨終供述をとらなくてはいけないケイトでした。

イギリスらしからぬ青空が悲しくなってきました。迫力の逃走劇であり心理戦。 ドットは最後にフェアバンクの名前などを供述したのでしょうか。

 

この供述やダニーの加害者リストもあり、フェアバンクら複数の警察関係者を逮捕、起訴。ナイジは年金をもらって引退したとのことでした。 

 

細かい小さな伏線だらけ。一瞬の視線や登場人物にも意味があります。

そして演出や音楽の妙。濃厚なドラマの醍醐味を味わえました。

 

 

 

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●大好きなシーンは、スティーブの釈放です。ケイトが迎えに来まして「ほかに誰が?」と言うんです。やっぱりパートナーが容疑を晴らしてくれたと分かってハグ。最高の信頼関係なんです。この二人は。

 

●デントンのテープはスティーブの取り調べで再生されてましたね。ここでか・・・とやり切れない感じでした。

デントンとのことでケイトはスティーブのことが信じられなくなったけど、でもやっぱり信じたい。ドットの行動も不自然だし、思い切って内密の調査に踏み切ったのでしょう。この判断力がケイトですね。

 

●そしてドットは、ちょっとは本気でケイトを好きだったのかもしれません。

でも恋愛感情というよりは、汚職警官という自分から抜け出したくてケイトの信頼が欲しかったのでしょう。それだけに内密の調査にショックを受けていましたね。

 

●一つ気になるのは、メイソンのこと。フリーメイソンですかね? フェアバンクとテッドの握手からメイソン絡みの組織があるのではないかとスティーブは気にしていました。

ケイトがサマーズ警視に調査のことを頼みに行ったときも、女性はメイソンに入れない、ということに言及していました。サマーズ警視の言葉です「Because I'm a woman, I can't be a Mason.」

男社会で中立的な公正な立場を貫ける、メイソンの影響を受けないという意味かもしれません。

 

●本国ではこのシーズン3までがBBC TWOでの放映。シーズン4からBBC ONEで放映されています。

 

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