カノンの海外ドラマ漂流記

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hulu ドラマ「メディチ」シーズン1 Ep8「主の顕現」EPIPHANY 最終回・感想

「MEDICI: MASTERS OF FLORENCE」(2016)全8話の最終回です。コジモ・イル・ヴェッキオ(老コジモ)と尊敬され、無冠の君主と形容され、死後「祖国の父」の称号を贈られたコジモ・デ・メディチ(リチャード・マッデン)の激動の半生でした

なぜイル・ヴェッキオ il Vecchio(the Elder)かというと、尊敬をこめての先達といった意味合いのようです。子孫に同じ名前の人多いですから。トスカーナ大公になったコジモ1世などと区別するためもあるようです。

 

 

教皇庁御用達バンクとして復活するまでのパッツィ家との確執

前回までのアルビッツィ殺害容疑を理由に、教皇庁との取引をパッツィ家に横取りされてしまいます。これは死活問題。欧州中の10分の1税をローマに送金することで莫大な利益を上げていたので、銀行業の根幹を揺るがす事態となります。

ドナテッロのダヴィデがあるメディチ邸の中庭で、コジモ(リチャード・マッデン)、妻コンテッシーナ(アナベル・スコーリー)、パッツィ(ダニエル・カルタジローン)。自分の天下になったら「堕落した芸術や大衆に無駄金は使わない」というパッツィに「フィレンツェが俗物の手に落ちる」と憮然とした表情のコジモでした。

ときどき芸術=美を尊ばない人にムッとするところ、地味に好きです。

 

「パッツィ家の陰謀」が描かれるシーズン2に向けて、パッツィが存在感を増してきたシーズン1後半。実は第1回から登場していたパッツィ役はイギリスのダニエル・カルタジローン。

ガイ・リッチー作品など英国中心に映画やTVで活躍中。見覚えのあるお顔です。もちろんこの辺りはフィクションなので、役名も「バンカー・パッツィ」になってます。

 

無策な教皇エウゲニウス4世(デヴィッド・バンバー)はひたすら祈るばかり。ですが、メディチの殺人容疑を疑っているので「一生背負えるのか、人殺しを教皇の銀行にはできない」とコジモに迫ります。人殺しでないと証明できれば可能性ありということですね。

 

今回は弟ロレンツォ・デ・メディチ(スチュアート・マーティン)が頑張りました

 

前回、父ジョヴァンニ(ダスティン・ホフマン)殺害を疑ったことをコジモは謝り、助けてほしいと率直に伝えます。ロレンツォは「兄さんのためじゃない」と言いつつも協力。家族のためですね。

余談ですが「GOT」にも出ていたそうです。パラレルワールドではラニスターだったとオフィシャルがつぶやいております。

 

そしてパッツィに依頼されたブレダーニ殺害犯を逮捕。パッツィの陰謀の証拠、ヴィスコンティ宛の手紙もゲット。危ないところはマルコ・ベッロ(グイド・カプリーノ)が助けてくれました!

やはりコジモのために動いていたマルコ。前回仲違いしたロレンツォに「なぜ助けた?」と問われて「お前だから」と答えるマルコ。じーんときますね。

でも結局戻らないのか・・・とがっかりしていたら、IMDbによるとシーズン2にも出演しているようです! 回想シーンかもしれませんが、楽しみが増えました。

 

でもでも、なんとロレンツォはパッツィ側に殺されてしまいます! これはショックでした・・・。これからまた家族がまとまる兆しが見えてくると思っていたのに。なぜ一人で行ったのか、マルコに来てもらわなかったのかと不憫でなりません。

皆の前では冷静だったコジモも礼拝堂で一人号泣でした。

 

コジモは、ウーゴ(ケン・ボーンズ)とともにローマへ向かい、軍隊に教皇を救うための資金を提供。あくどい相手ではありますが交渉をまとめ、結果、教皇側の軍が勝利します。

戦果とともにパッツィとミラノ公ヴィスコンティの密約の手紙を教皇に渡し、取り引きするコジモ。交渉の手順はお見事でした。

 

教皇は「神が私を助けてくれる」と祈るだけなのに対し、「神は私をもたらした」と答えるコジモには、自信と使命感が表れていたと思います。ウーゴにも「私たちは正しい道を行くんだ」と明言してますし、吹っ切れた感じはありましたね。

そしてロレンツォの死を乗り越えて、(銀行家として政治家として)フィレンツェのために前進したいということでしょうか。

 

言葉は立派だけどご都合主義な教会側と、神への信心はもちつつも現実に向き合う対比は面白かったです。

 

制作のひとり、フランク・スポトニッツが「このドラマは家族の物語であり、善と悪の境界線を描いている」と語った記事があったそうです。コジモが、父親と神という二人の父の間で迷いながら道を見つけるストーリー、でしょうか。

 

ファミリーの今後を示して終わります

一方、家庭内では。

 

マッダレーナ(サラ・ヘルバーバウム)の妊娠が確実になり、コンテッシーナは今度こそ家を出る決意をします。鍵と指輪と大切なネックレスを外し、荷物をまとめたところにルクレツィア(ヴァレンティナ・ベレ)が帰宅。息子ピエロ(アレッサンドル・スペルドゥティ)がシニョリーアでコジモの代役として成功したことを伝えられます。

 

ロレンツォがパッツィの手紙を託したのもコンテッシーナ。結局出ていくタイミングを逃し、ロレンツォが亡くなったと聞かされます。コジモも、本気だったが出て行かなかった(行けなかった)気持ちが分かったのでしょう。気遣っていました。

アルビッツィについても、最後まで答えは分かりませんでしたね。(やっぱりコジモかな・・・。)

二人で話し合い、折り合いをつけたのでしょう。「父以上に父のようになりすぎ、神に罰せられた」というコジモに、自分たちは同じように罪びとだから償いましょう、子供を育てましょう「私たちならできる」と力づけるコンテッシーナ、ほんと頼りがいがあります。

 

マッダレーナとの息子カルロはメディチ家で育てられ、高い教育を受けて聖職者になりました。シーズン2に登場するようです。

 

さらにジョヴァンニ殺害は長年忠実だったウーゴだということが回想の形で明かされます。ロレンツォの子供を妊娠したローザを子供といっしょに殺すよう命令され、もう我慢ができなかったということらしいです。きっとずっと告白はしないでしょうね。

コジモに「あなたは父君よりはるかにいい人間だ」と言ってましたから、今後も裏切ることはないでしょう。

 

そして跡継ぎの二人はたくましくなりました。特にルクレツィアの強くなったこと! 

メディチ家のスピリットを受け継いでいくことがはっきり示されます。子供の名前はロレンツォにすると言ってましたね。後の“豪華王”ロレンツォ・イル・マニフィコです。

 

最後はメディチ家が大切にしていた公現祭(EPIPHANY)のシーンでした。東方の三博士によってイエスが現れた奇跡を称えるお祝いとのこと。教皇とともにかたい表情で歩くコジモから、建設途上のドゥオモが映し出されて終わります。

Gozzoli magi

メディチ家三代(コジモ、ピエロ、ロレンツォ)が描きこまれた「三賢者」。

 

突っ込みたい気持ちは色々ございますよ。

 

封蝋がされていたはずのパッツィの手紙の中身がなぜ分かったのかとか(冒頭の手紙のシーンにヒントがあったかもしれないし切り方で問題にならなかったかもしれない)、なぜロレンツォは一人で凶悪犯を連れて行ったのかとか(マルコがいれば)、こんなに早くロレンツォが亡くなったら家系は断絶しちゃうだろうとか(結婚したはずだから子供がいる設定でいいのか)、後半とっ散らかったままですよね、とか。

 

でも、丁寧な作りで凝った衣裳や美術がいっぱいで役者さんみんな素晴らしく、とても好きな作品になりました。協力して前に進むことを決意した家族の物語でしたね。

https://mediciseries.tumblr.com/post/154110326663/richard-madden-is-cosimo-de-medici-son-of

マッデン君、お疲れ様でした。メイク濃かったけど。

 

なお、SNSの引用元がNteflixになっているのは海外配信のためです。国によって配信元は異なり、日本ではhuluです。

↓メディチ家集大成。