「結婚」と「戦争」が2大要素だった「MEDICI: MASTERS OF FLORENCE」(全8話)のエピソード2「円蓋」。感想の後編は<戦争編>です。
戦争で疲弊したフィレンツェを救うには?
結婚して約20年、たぶん40代前半の設定。息子も結婚し、プリオーレ(統領)の一人としても忙しいコジモ(リチャード・マッデン)。
戦争の発端はミラノ公国がフィレンツェに近いルッカに攻め入ったことでした。武力によって治めてきた前時代的なアルビッツィ家は、フィレンツェを守るために戦うべし! と根性論を主張します。フィレンツェは共和国ですから、投票が行われ参戦が決まります。
一向に戦況が好転しないなか、軍服のまま戦地から戻ったリナルド・アルビッツィ(レックス・シャープネル)が、さらなる戦争続行を熱弁。長官は(ドラマでは)メディチ寄りですが勢いは抑えられません。コジモもまだ時期じゃないとして賛成にまわり、戦費のための増税が決まりました。
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議長役のゴンファロニエーレ(行政長官・本来は正義の旗手という役職らしい)グァダーニ。演じるのはローレンス・オリビエ賞受賞俳優ブライアン・コックスです。なお、この時期のパッツィ家当主はもちろんアルビッツィ派で、実は第1話から常に隣にいます。
その後、コジモは一人大聖堂に向かいます。ローマでパンテオンを見上げた時と同じ瞳で見上げ、登るのです。
🖋️ Frank Spotnitz rivela: due stagioni per la storia di Lorenzo ➡️https://t.co/1KZ0Yo7xHt#IMedici
— I Medici (@imediciofficial) June 12, 2017
サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂は、まだ完成していません。完成まで100年以上かかったらしく、円蓋(ドーム、クーポラ)を作ることがコジモの若い頃からの夢でした。(コジモが生きている間に完成します)
建築途中のドゥオモからトスカーナを見渡すシーンは素晴らしかった! 音楽と映像だけでとても美しく、建造を決断する素敵なシーンでした。
ドゥオモの建築はかつて父にも反対されました。人間の成し遂げることはすべて神への賛辞だ、銀行家にできることは祈ること、と。
強権的でいて、息子の適性が分かっていた、受け入れることもできると分かっていたのだと思います。(もっとも、ここまで芸術好きとは思わなかったでしょう)
芸術への夢と政治家としての現実
神の栄光を表現する芸術への夢、フィレンツェのためにできること両方を考えたうえでの決断ですが、大金がかかることに周囲は当然猛反対。コジモは市民が重税に苦しんでいる今だから必要と説明します。資材を調達し、働く人のための衣料や食を商う人も集まってくるから。
「雇用を生むのですね」と答えたのはピエロ君。息子のピエロは父に認められたくて一生懸命の健気な跡取りなんです。後のお話の画像ですが↓
"Remember to live life, and consider being a man and not a boy, [...]" Piero wrote to the young Magnificent on his first trip to Milan. Centuries go by, but things do not change!😉#IMedici pic.twitter.com/PVooV73e62
— Medici is STREAMING NOW on Netflix (@MediciSeries) November 29, 2017
演じるのはイタリアの若手人気俳優、アレッサンドロ・スペルドゥティ(発音いいかげんです)。1987年、ローマ生まれ。
“L'idea di recitare con Dustin Hoffman era quasi surreale.” #AlessandroSperduti per @HuffingtonPost #IMedici → https://t.co/qx3ar4EjfQ
— I Medici (@imediciofficial) October 18, 2016
髪型が違うと別人です。
「雇用によってメディチはフィレンツェの人に感謝される」とすぐに理解を示したのはコンテッシーナ(アナベル・スコーリー)でした。実は妻がいちばんコジモの戦略に理解があることが度々示されます。ドゥオモの建造はメディチ流の不況対策、経済政策を兼ねていたわけです。
といっても、ここまで巨大な円蓋を作るなんて前代未聞。コジモは多くの学者、知識人の意見を聞きますがまとまらず、このとき登場したのが自信家のブルネレスキ(アレッサンドロ・プレジオシ)でした。
斬新なアイデアに感心したコジモは思い切って工事をまかせ、街に活気が戻ります。
Il vero artista vede l'autoportanza! 😎#IMedici #TeamBrunelleschi pic.twitter.com/mJBY7xTMYk
— I Medici (@imediciofficial) November 22, 2016
成功しなかったけれど、多くの人が意見をぶつけ合う場面は興味深かった。見当はずれかもしれませんが、後のプラトン・アカデミーをイメージしているような気がします。女性もいましたね。生まれや家柄を気にせず、学問・芸術を大切にしたコジモらしいシーンだったのでしょう。不毛な議論には閉口していましたけど。
この「夢」を決断するとき、印象的だったシーンがもう一つあります。
メディチ家の大番頭ウーゴ(ケン・ボーンズ)が、「一度失ったものは二度と取り返せない」とコジモを説得するシーン。父に反対された芸術家の夢は戻って来ないからあきらめなさい、という意味だと思うのですが、コジモは別のことも考えたかもしれません。
戦争で疲れたフィレンツェ市民を見捨てて何も手を打たなかったら、二度と信頼は取り戻せない、と。そう受け取って背中を押されたんじゃないかと。
ところで戦争は膠着状態に陥ります。ローマ(教皇)は和平交渉なんて面倒に手を貸す気はありません。事態が動かなくなった時を見計らって、コジモはピエロを連れて戦地へ。
そしてなんと敵軍司令官とハグ! 紹介されたピエロはびっくりです。
(↑画像がないので本物のフランチェスコ・スフォルツァで)
まだ傭兵隊長だったスフォルツァ将軍(アンソニー・ハウエル)は以前メディチバンクに世話になったそうで、コジモとは旧知の仲だったのですね。傭兵ですからビジネスライクです。(ヨーロッパの傭兵の歴史は長い)
スフォルツァ将軍はコジモからミラノのヴィスコンティ家への提案を仲介し、和睦をとりつけます。コジモはタイミングを待っていたのですね~! 外交官としてのコジモの活躍で平和が戻ることになりました。メディチとスフォルツァの協力関係を気持ちよく仕立てましたね。(スフォルツァ将軍、後のエピソードでも度々登場します)
その後、貴族になったスフォルツァ家もヴィスコンティ家もミラノ公をつとめた大貴族。
結局、ルッカの利権をねらったミラノに対して、経済優先のルッカの商人たちが納得できる金額で話をつけたということでしょう。おそらくメディチが融資したことは確実(実際はフィレンツェがルッカを狙っていたみたいです)。
ゆっくり寡黙に着実に結果を出す、政治家コジモの成長ストーリーだったと思います。
ようやく片付き、さあドゥオモだ!! と思ったら最後に衝撃の展開が。なんと黒死病が発生しました。次回へつづく。