Netflix配信中、ドラマ「エイリアニスト(The Alienist)」のシーズン2にあたる「暗闇の天使(Angel of Darkness)」全8話。ネタバレ感想です。
シーズン1は2018年、シーズン2は2020年公開でした。
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左から、エイリアニスト=精神科医のドクター・ラズロ・クライズラー(ダニエル・ブリュール)、私立探偵サラ・ハワード(ダコタ・ファニング)、NYタイムズ記者ジョン・スカイラー・ムーア(ルーク・エヴァンス)。
この3人による19世紀ニューヨークでの捜査の物語。
シーズン1との違いは、
■サラ■NY市警初の女性職員だったが警察をやめ、女性だけの探偵事務所を開いたこと。
■ジョン■挿絵画家としてだけでなく、記者としての仕事を始めたこと。
■ラズロ■愛する人を失った心の傷と向き合えたようで、ちょっとずつ浮上中というところ。
そして全体に、とても見やすくなりました。時代性や世界観は保ったまま、エンターテインメントとしてよりまとまった感じというのでしょうか。
心の闇に迫る思考を追ったシーズン1、さすがにダークな描写が長かった・・・。
好きなんですよ、ダークでずっしり引きずり込むよな描写。ですが、ストーリーの進行を止めるほどに重くて苦しいタイミングが時々あり、思い入れが先走ってる感が否めませんでした。
シーズン2は、よりドラマ性を意識して面白さがアップしたと思います。
では第1話「幼子の口によって(Ex Ore Infantium)」、第2話「不気味な影(Somthing Wicked)」まとめ感想です。
19世紀の女性探偵サラを中心に進みます
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行動する女性、サラはブロードウェイに事務所を借り、探偵事務所を開業。スタッフも女性ばかりです。
冒頭で女性の参政権や死刑廃止を求める活動が描写されまして、女性運動が盛んになった時期ということがうかがえます。
そんな女性たちの先頭に立っていたともいえるキャラクター。
広くて趣味のいい調度品に囲まれた格好いい事務所です!
ラズロは父親の思い出の上質な品に囲まれている・・・と分析を始めたのでサラはきっぱりやめさせてましたが。
時代は1897年になりました。
テディ(セオドア・ルーズベルト)は海軍次官補になっていましたからいずれ再登場してくれるでしょう。
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事件は2件の赤ん坊の誘拐。連続犯と思われます
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■事件1■貧しい女性マーサが赤ん坊を殺したとして死刑にされます。
が、後日、(当時世界最大だった)高級百貨店シーゲル・クーパーの人形売り場に瞼に絵の描かれた遺体が飾られていたと発覚。無実だったと分かります。
ラズロはマーサに子供を見つけると約束していました。
■事件2■裕福なスペイン総領事リナレス夫妻の赤ん坊アナが誘拐されます。
ベビーベッドには、目に描き込みをした人形が置かれていました。サラが依頼を受け、ジョン、ラズロと協力しながら捜査を進めます。
人形が共通点の2つの事件、同一犯の可能性があるとして捜査が始まりました。
ラズロは、瞼の上に描きこまれた印は “死者の肖像” に関係すると分析。“死の象徴”や“死の追悼”ともいい、亡くなった子供の写真の目に描きこみ悼んだ習慣とのことです。
“犯人は、人形に悪を閉じ込めた。残酷な行為と自分を切り離し、愛することができるから。苦しみと孤独のなかに引きこもっており、邪悪さを覆い隠した顔をして、また殺すだろう”
これが最初のプロファイルとなりました。
依頼人に寄り添うサラ、科学的に進めたいラズロ
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サラは市警での仕事を通して、捜査に必要な技術、事件を分析する能力が開花したのでしょう。
ただ真実を突き止めるだけでなく、依頼人に寄り添い、信頼関係を築く確固としたセオリーを培ったようでした。
対してラズロは医者・科学者としての手法にこだわります。
今回も、ストレート過ぎて警戒される質問を繰り出したり、最新手法である催眠療法を行いましょうとまっしぐら。
まだ犯罪心理学や精神医学が未発達だった時代です。偏見と戦いながら信念を貫こうとする姿勢は立派。ですが、被害者にとってはまた別の話ですよね。
サラとバランスよく補い合いながら共闘できるとよいのですが・・・。
でも催眠術についてのラズロの解説は面白かったです。
“人間の記憶は思ったほど抑圧されてはいない。
催眠術によって患者を自分の意識から乖離させ、その記憶を夢として新たに体験させることができる”
ジョンは新聞社主ハーストの娘と婚約中
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サラに一度はプロポーズを断られたとはいえ、ジョンとサラを絶対的に応援している身としてはショックでしたよ・・・。
でも当時の上流階級としては、結婚は避けては通れないことなのでしょう。
ところで、シーズン1では、(大統領になる前の)セオドア・ルーズベルト、(上流階級代表としてのうるさ方)J.P.モルガンが登場しましたね。
実在の人物はお約束のようで、シーズン2では、まずウィリアム・ランドルフ・ハーストが登場しました。ジョンの婚約者ヴァイオレットはハーストの婚外子という設定。対外的には名付け親ということになっています。
ウィリアム・ランドルフ・ハーストは、「市民ケーン」のモデルになった人物で「ニューヨーク・ジャーナル」紙を発行する新聞社主。扇動的で “イエロー・ジャーナリズム” の語源にもなった騒動に関係しています。
ジョンは高級紙「ニューヨーク・タイムズ」の記者です。ハーストとしては、娘婿をライバル社から引き抜きたいという思惑があるようです。
加えて、ジョンの生家スカイラー・ムーア家はニュー・アムステルダム出身ということを気に入っていました。
オランダ植民地時代のNYから続く名家、という位置づけなのでしょう。
今シーズンは、このジョンの婚約がサラとの関係に影響することは確実ですね。
人形をたどり、関係者と思われるギャング、グーグーを発見
"One push through the thorax and you’ll be chokin’ on your own sweet blood." — Goo Goo Knox #TheAlienist pic.twitter.com/1UK749DIvL
— Angel of Darkness on TNT (@theAlienistTNT) July 20, 2020
ジョンとサラはシーゲル・クーパーの人形の購入者をたどり、一時滞在の宿がギャング?無法者集団ダスターズのリーダー、グーグー・ノックスの所有だったと気づきます。
が、↑狂犬のようなグーグー。犯人ではなさそうですけど、後々からんできます。ちなみにジョンの危機はサラが銃を構えて助けました。
最後は産院での出産シーンでした。
ラズロが糾弾しているドクター・マーコーのライイング・イン病院。マーサの赤ん坊が連れ去られた病院です。
前時代的な考えのマーコーが、有力者の愛人の子供を取り上げるのですが、死産という事にしよう、と言うあたり、秘密がありそうです。
娼婦に怒りをぶつける看護師長、戸惑いながらも手伝う看護師が登場しました。
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テンポよく進むシーズン2。主な要素と登場人物が出揃いました。
●ちょうど米西戦争前夜の物語でしたね。
ハーストの新聞がスペインを悪者にして世論をたきつけ、発行部数を伸ばしていた時期にあたります。
●シーズン1でラズロをアシストしていたサイがオイスターバーのオーナーになっていて、姪のジョアナが働いている描写もありました。
裕福な白人のメイドでなく自分らしい仕事がしたいというジョアナ。女性として、黒人として闘う勇敢な女性です。
●NY市警の大物OBバーンズとグルになったドイル警部がちょっかい出してくるんです。
サラが頑張って防ぎましたけど、捜査の障害になりそうです。
●楽しかったのは上流階級が集うレストランのシーン。
ラズロは一人で優雅に食事をしているのですが、ジョンの婚約者に紹介されたりサラに怒鳴り込まれたり。
急かすサラに「フォアグラを注文したのに」と未練いっぱいで可愛かった!
浮世離れした科学オタクのドクターという雰囲気が楽しめました。ダニエル・ブリュールならではですね♪
次回、重要人物たちの関係が解き明かされるでしょうか。