チャタレイ夫人はホリデイ・グレインジャー、夫であるチャタレイ卿はジェームズ・ノートン、そして森番オリバー・メラーズ役がリチャード・マッデンという、たいそう豪華な当時勢いのあった若手英国俳優陣による作品です。今や皆さん英国を代表する活躍ぶりですね。
正確にはBBC Oneで放映されたTV映画になりまして、2015年公開(Lady Chatterley's Lover)。ディテールは省きますが、キャストと感想紹介です。hulu配信中。
感想~~1920年代の社会派ドラマでした
まず、過去「何度も映画化された問題作」ということは知っておりました。ええ。
とても官能的で子供は見てはいけない、読んではいけない、的な。
全然違いました。
大人になったし、少々のベッドシーンじゃ驚かない作品だらけになったということもあるのでしょうが、この作品では露骨な官能シーンは問題ではございません。
それより、身分違いの恋だとか、格差社会だとか、そんな時代背景をラブストーリーの名を借りて描いた作品だったんですね。
リチャード・マッデン出演というだけでおそるおそる観てみたわけですが、はっきり言ってビックリでした。
関係ないですけど、1993年版BBCのドラマではショーン・ビーンだったみたいです。
主な舞台はチャタレイ卿のお屋敷です。
A notorious tale of love, loss and temptation. Holliday Grainger & @jginorton star in #LadyChatterleysLover at 9pm. pic.twitter.com/emwgZjLvMU
— BBC One (@BBCOne) September 6, 2015
でも暗く悲惨な炭鉱事故から始まりまして、「ライン・オブ・デューティ」「ボディガード -守るべきもの-」のジェド・マーキュリオ監督・脚本らしさを漂わせています。
上の写真は、準男爵クリフォード・チャタレイ(ジェームズ・ノートン)とコンスタンス“コニー”(ホリデイ・グレインジャー)の結婚式。何不自由のない英国上流階級の暮らしが描かれます。
ちなみに、冒頭の炭鉱はチャタレイ卿の会社で、危険で苦しい重労働を強いられる労働者は鬱屈を抱えております。炭鉱の町の暗さが印象的でした。
20世紀初頭といえば労働争議が盛んになった時期。社会の不平等に不満をもつ労働者、同時に女性の解放を求める人たちの存在が色濃く反映されているのでした。
その一つの要素が恋愛だったわけで、そういう面で名作といわれるのだなとようやく分かってきました。今さらですが。
(というか、そういう解釈のジェド・マーキュリオ版)
チャタレイ卿のお屋敷はそれはもう豪華で趣味のよい素敵なところなんですが、チャタレイ卿は第一次世界大戦で負傷して、下半身不随になってしまいます。
ちなみに労働者階級出身ながら実力を認められ、中尉にまで昇進したメラーズ(リチャード・マッデン)は戦場でも活躍してまして、ドラマでも少しですが描かれました。炭鉱では現場監督のような立場でしたね。
きっと原作では、炭鉱→戦場→森番へのドラマがもっと色々あったのでしょう。
英国貴族は伝統的に現場で先頭に立つのが義務・名誉とされていましたから(個人のイメージです)、チャタレイ卿もその通り果敢に突き進んでしまうわけです。でも判断力は甘くて、結局部下たちを死なせてしまいます。
その後も(当時なりに)良き経営者であろうと努めますが、もう時代はそれだけでは済まないところまで来ていた・・・という貴族階級の試練という背景もある。
つまり・・・ジェームズ・ノートンに同情してしまうだろ! となってしまいまして、あ、別の恋愛モノだったと我に返ることが何度かありました。
戦場から帰ったメラーズ(リチャード・マッデン)は、チャタレイ邸の森番として就職します。
ご主人様との面接で紹介状を渡すシーンがあるんですが、直接手渡しは失礼なことらしく、執事が銀のトレーで仲介するのがマナーでした。貴族とそれ以外は明確に違う人種だってことですね。このあたり手を抜かないのがジェド・マーキュリオぽいかと。
— Radio Times (@RadioTimes) September 6, 2015
そして夫の介護に疲れたコニーとメラーズは恋に落ちます。
夫に対する愛はあるのに愛し合えない現実から、最初はフィジカルな関係でしたけれども本気で愛し合うことになりました。
森の自然は美しいし、不器用なメラーズがなかなかに可愛かったです。
Connie has a choice to make. Who would you choose?
— BBC One (@BBCOne) September 6, 2015
RT for Mellors
Fav for Clifford#LadyChatterleysLover pic.twitter.com/Mf4NaMA3hX
ところで貴族にとっては何より跡継ぎが大事。他の男との間に子供を作ってほしいというチャタレイ卿は・・・やっぱりズレてます。
妻は肉体的な満足より子供を欲しがっていると思い込んで(そう思わないといたたまれないでしょう)提案するのですが、夫も妻も純粋につらい状況ですよね。
ここで常識はずれな上から目線の夫という解釈だとリアリティがなくなります。でもジェームズ・ノートンが苦悩しながら告白したら・・・やっぱり同情してしまいました。
ただし相手は同じ階級でないと納得できません。コニーはメラーズの子を妊娠しますが、一緒になれないことに苦悩します。
メラーズが、自分は12歳から炭鉱で働いた。君たちは子供を炭鉱で働かせて平気なのかと言うシーンはテーマの一つでした。
ところで、2人のことをチャタレイ卿に伝える女性がいるのですが(当時の言葉で使用人です)、炭鉱事故で死亡した男性の未亡人で、労働者を使い捨てにする支配階級への復讐のつもりでした。貴族の跡継ぎが庶民の子というのは恥ずべきことだから。でもコニーが本気でメラーズを愛していることを知って後悔します。
森を去ろうとするメラーズに、逃げるの? と言うコニーは強かった。2人で生きていくと決めたのですね。
コニーは「私を解放してほしい」とチャタレイ卿に訴えて離婚します。
この後、コニーとメラーズが幸せになれるかどうかは分かりません。原作では触れられているかもしれませんが、とってもワイルドなメラーズと洗練されたコニーがどう人生を歩んで行くのか。
でもこういうカップルは実際にたくさんいて、新しい時代を作ってきたんだと思うと、これこそ何回かのドラマシリーズにしてほしかったなあと思います。
教養はないけどリーダーシップに優れたメラーズをもう少し掘り下げてほしかったし、チャタレイ卿の階級の問題点はもっと複雑だったはず。コニーとメラーズの恋愛シーンは美しいのですが、最後のチャタレイ卿との対決は怒鳴って終わってしまい・・・時間切れな感じです。
あくまで主人公はコニーでしたが、恋愛だけにフォーカスするのでなく社会問題がたくさんからんできただけに、もうちょっと広く詳しく知りたかった、中途半端になったという印象ではあります。
でもとっても真面目な丁寧な作品だったと思います。
キャスト紹介&近況
何といってもホリデイ・グレインジャー(Holliday Clark Grainger)素敵でした💗
1988年3月27日イングランド、マンチェスター・ディズベリー出身。「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」ではルクレチア・ボルジア役。
リチャード・マッデンとは共演が多くて(ビジュアル的にもとってもよく合う!)映画「シンデレラ」ではシンデレラの姉の一人(カップルではないし顔もよく分かりませんが)、近未来SFドラマ「フィリップ・K・ディックのエレクトリック・ドリームズ」第5話「フード・メーカー」では↓
Richard Madden plays Agent Ross and Holliday Grainger plays telepath Honor in #ElectricDreams https://t.co/pyxbm1D1Mo pic.twitter.com/08VjbF3YCZ
— Radio Times (@RadioTimes) September 17, 2017
最近は、J.K.ローリングがロバート・ガルブレイス名義で書いた「私立探偵ストライク(Strike)」でトム・バークと共演(amazon prime video配信中)。リリー・コリンズ共演の「Halo of Stars」制作中と引っ張りだこです。
上品で強さがあって、今後も注目したいです。
🎉Holliday Grainger to star alongside Tom Burke in #TheStrikeSeries, a new drama based on the @jk_rowling novels: https://t.co/esZKcoFvsR.🎉 pic.twitter.com/6BYZnelMGY
— BBC One (@BBCOne) November 2, 2016
そして、ジェームズ・ノートン(James Norton)! 1985年7月18日ロンドン生まれ。「グランチェスター 牧師探偵シドニー・チェンバース」で意識しましたが、個人的にはそれはもう「戦争と平和」(2016)!
↑リリー・ジェームズともども大好きになった舞踏会のシーン、BBC公式からお借りしました。
何だかふんわりしたルックスがツボです。話題の「Nowhere Special」、早く日本でも公開・配信しないかな↓
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最近では「マクマフィア」が面白かった(「ストーリー・オブ・マイライフ」はまだ見てません。きっと素敵に違いない)
でも007 候補として話題になったのは意外でした。ジェームズ・ボンドには優しすぎるというか天然すぎる気がしますけど、「ハッピー・バレー」のサイコな悪役は印象的だったので、演技力は問題ないということで。
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最後にリチャード・マッデン(Richard Madden)です。1986年6月18日スコットランド、レンフルーシャーのエルダースリー生まれ。
こちらにまとめて以降、新作情報はございません。
マーベル映画がいろいろと公開延期になっているみたいで、映画「エターナルズ」の公開時期も不明です。IMDbでは相変わらず2021年とだけ表示されていました。
個人的には「Citadel」情報を楽しみに待ちたいと思います。
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で、「ゲーム・オブ・スローンズ」卒業から2年後がこの作品で、同じ年に「シンデレラ」公開。その3年後後に、ジェド・マーキュリオと「ボディガード -守るべきもの-」(2018)を作るわけですね。
↑は、「ライン・オブ・デューティ」との Red Nose Dayコラボ。動画もご覧ください。
↓はスコットランドでシンデレラ、かつジュリエットだったリリー・ジェームズと。何のお仕事だか撮影だか不明ですが、近況報告ということで。
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